家族信託活用事例 〜共有不動産の対策としての家族信託(2)相続による共有〜
『子ども達に平等に相続させたいが、共有化によるトラブルを回避したい』
ご家族構成/財産の内容
- 依頼者Xさんには、子どもが3人(長男A、二男B、長女C)います。(妻は鬼籍)
- Xさんは、築30年のマンション1棟を所持し、家賃収入を得て暮らしています。
ご要望/心配なこと
- Xさんには、自分が死んだ後は、子ども達3人に平等に財産を相続させたいという希望があります。
- 長男Aが近くに住んでいて、今も不動産管理を手伝ってくれています。
- 将来、マンションの老朽化した場合、大規模修繕・建て替え等を考えなくてはいけませんが、そのときに子ども達同士で方針について揉めないか不安です。
他に財産がないケースでは、子ども達を平等に扱うためには、マンションを共有にせざるを得ません。
3人でマンションを相続させる旨の遺言を書き、所有権で共有にしてしまうと、当該不動産を処分するためには共有者の意見の一致が必要となります。現在は円満でもその関係が将来継続する保証はどこにもありません。
そこで、家族信託を利用して、(所有権で共有にさせるのではなく)受益者として受益権を共有させることで、所有権を相続したのと同様の効果(平等相続)を実現することができます。家賃などの収益は受益者として平等に収受しつつ、管理処分権限を1人に集約することにより、共有不動産の不良資産化を防ぐことが可能です。
解決策=家族信託の活用
- Xさんと長男Aとの間で信託契約を締結します。
- 委託者:X
受託者:長男A
受益者:①X→②(Xの死亡後は)子3名(長男A・二男B・長女C) - 信託契約の内容は、
- Xが所有するマンション1棟を信託財産とします。
- 長男Aは、信託財産であるマンションを管理するものとします。
※長男Aは、家賃収入を管理し、受益者であるXに現金交付します。
※Xが死亡したら、受益権は子ども達3人に変更されますので、Xの死亡以降は、家賃収入は子ども達3人が得ることができます。 - 信託契約の中で、将来、長男Aの判断で、大規模修繕や建て替え、売却等ができる権限を設定します。
ポイント解説
- Xさんが生きている間、Xさんは受益者として家賃を得ることができます。
- Xさんは面倒なマンション管理業務をすべて長男に任せることができます。
- Xが亡くなった後、受益権は子ども達3名に引き継がれますので、子ども達は、実質的にマンションを共同相続したのと同じ効果を得る(家賃収入を得る)ことができ、父Xの「子ども達は平等に」という要望に添う形となります。
- 一方で、Xの存命中はもちろん、Xが認知症になった場合や、Xの死亡以降も、長男Aが受託者としてマンションを管理しますので、長男Aは、将来マンションが老朽化した際の対策(大規模修繕・建て替え・売却)を独自に決断することができます。(二男Bと長女Cは、家賃収入を得ることはできるが、管理方針に口を出せない立場となります。)
- つまり、長男Aは、将来の老朽化の際も、意見の不一致に頭を悩ますことがなくなり、また一部の共有者から協力が得られないことによるマンションの不良資産化を防ぐことができます。
遺言との相違点
Xさんが、例えば、「マンション1棟を子ども達3人に平等に相続させる」という遺言を作成したとすると、どのようなトラブルが予想されるでしょうか?
- Xの死亡後、マンションは子ABC3名の共有となるので、家賃収入等は3分の1ずつそれぞれに入ってきます。この点は「家族信託」を活用した場合と同じです。
- 一方で3名が所有者ですので、大規模修繕をするにも、建て替えをするにも、売却をするにも3名の意見の一致が不可欠です。
- もし将来、マンションが老朽化した場合に、長男は「建て替えたい」、二男は「大規模修繕で費用を最低限に抑えたい」、長女は「売却して現金で分けたい」など3名の意見が異なったら、対策を進めることができません。老朽化したまま入居者が入らず不良資産となってしまいます。
- 子A・B・Cについて相続が発生した場合、それぞれのマンション持分が相続人に引き継がれます。マンションの共有者の人数が増えてしまい、さらに意見の一致が難しくなります。
アクセスマップ
- 〒251-0052 神奈川県藤沢市藤沢973 相模プラザ第3ビル 2-B
- 藤沢駅(JR、小田急、江ノ島電鉄)北口から徒歩5分