遺言(藤沢 茅ヶ崎 遺言相談センター)

司法書士・行政書士 青木雄平
司法書士・行政書士 青木雄平

 遺言は資産家のためのものではありません。最近は遺言の重要性が認識されつつあるものの、「自分にはたいした財産は無い」「死んだ後のことを考えるはどうも」「家族円満なので遺言なんて無くても」。まだまだこのように感じている方も多いのではないでしょうか。

 しかし、遺言の作成をオススメします。遺言の最大の役割は、自分の思いを確かな形で残すことですが、それだけではありません。自分の財産が原因で、残された家族が余計な苦労をせずに済む(手続きが楽、スムーズに進む)、そんな役割も遺言にはあります。

 気力も体力も充実している時こそ、「自分の財産の状況」「家族にどう使ってもらいたいか」、そして何よりも「家族に伝えたいメッセージ」を考える機会を一度設けてはいかがでしょうか。一度作成しても、いつでも取り消しや内容の変更ができます。元気なうち、思い立ったときこそ、まず一度作ってみることが大切です。

こんな方はぜひ遺言を

 遺言が無い場合は、遺産をどのように分けるか、誰がどれをもらうのかを相続人全員が集まって話し合う遺産分割協議が必要になります。相続で「もめる」というのは、この遺産分割協議がまとまらない状況を指します。

 では遺言があるとどうなるか? 次のような方は遺言を作った方が良い、否、絶対作るべきです。

お子様がいらっしゃらないご夫婦

 配偶者との間に子がなく両親も他界している場合、法定相続によると配偶者の他に故人の兄弟姉妹が相続人となります(配偶者=4分の3、兄弟姉妹=4分の1)。配偶者と故人の兄弟姉妹は、密に連絡が取れる間柄ですか? 疎遠になっていませんか?

 遺言が無ければ、そんな状況の中、話し合いをしなければなりません。遺言があれば、全ての財産を配偶者に残すことができるのです。手続きも、残された配偶者だけの手で進めることができ、余計な気苦労がなくなります。

相続人の一部に行方不明の方がいるご家族

 相続人の一人と何十年も連絡が取れない。そんな場合に相続が発生したらどうなるでしょうか。遺言が無い場合、遺産分割協議が必要なのに全員が集まれないため話し合いができないことになります。この場合、不在者財産管理人の選任という裁判所の面倒な手続きを取らなければなりません。遺言があれば、行方不明の方は放っておいて相続手続きができるのです。

再婚された方

 前の配偶者との間に子があり、再婚した配偶者との間にも子がある。そんな場合に相続が発生したとしましょう。円満な話し合いができるでしょうか? 感情的な問題が起こりがちです。感情論になったらもう大変、理屈ではなくなります。

 遺言でしっかりとご自分の意志を残しておけば、余計な問題が起こるのを避け、「残したい財産を、残したい人に残す」ことが可能となります。遺留分という別の問題が発生しますが、そこも含めてどうしたらよいか一緒に考えましょう。

特定の方を後継者にしたい方

 企業のオーナーの方、自分の後継者として経営手腕があり意志がある相続人に相続させたいと思いませんか? 自己の会社の出資株式も相続対象です。遺言があれば、事業承継をするのに必要なもの、事業用資産(工場用地など)を確実に後継者に残すことができます。他の相続人からの遺留分減殺請求に対応するため、遺言の内容をよく検討しなければなりません。

法定相続人以外の方に財産を残したい方(お世話になった方へ)

 先に亡くなった子の配偶者(例えば息子のお嫁さん)が自分の看護療養に尽くしてくれた。あるいは、会社が危機のときにお金を融通してくれた恩人。これらの方は法定相続人ではありませんが、遺言があれば、財産の一部を渡すことも可能です。

公共のために財産を役立たせたい方(基金などの寄付したい)

 子供たちは独立し立派にやっている。奨学金や育英基金、自分が生まれ育った自治体に自分の財産を使って欲しい。こんな考えをお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。遺言があれば実現できます。

遺言が無いと/遺言があれば

遺言が無ければ、まずは話し合い

 遺言が無い場合は法定相続人が全員集まって遺産をどのように分けるか、誰がどれをもらうのか話し合いをしなければなりません。これが遺産分割協議です。

 全員が合意しさえすれば、どのような内容でも可能です。法定相続分は一つの目安になりますが、従う必要はないのです。とすると、相続人の一部が独り占めしたい! なんてことを言い出すかもしれません。あるいは相続人の一部が話し合いの席に付こうとしないことも起こり得ます。

 遺産分割協議は、相続人全員が合意する必要があるのです。相続でもめるというのは、この遺産分割協議がまとまらない状況を指します。分割協議がまとまらなければ不動産の名義書換はできませんし、金融機関も払い戻しに応じてくれないでしょう。

<参考>最終的に遺産分割協議がまとまらない場合
家庭裁判所の調停、審判の手続きをとるしかありません。完了するまで長期間を要する場合もあり、また、ここまでくると相続人の人間関係にもヒビが入り、修復は限りなく難しいでしょう。

遺言があれば…

 遺言があれば遺産分割協議が不要となります。つまり話し合いの過程で生まれる相続人間の軋轢や諍いなど、相続を巡る余計なトラブルを起こさずに済み、さらには相手方に対する気遣いや気苦労とった心理的負担が格段に少なくなります。遺言は残された家族にとってもやさしい制度です。

遺言の種類

 民法が定める遺言にはいくつかの種類がありますが、ここでは自筆証書遺言と公正証書遺言についてご紹介します。どちらにしたら良いのか、簡単な比較表を載せておきます。

  自筆証書遺言 公正証書遺言
作成方法

本人が遺言の全文、日付、氏名を全て自筆で書いて自分で印を押し、自分で保管します。

法律の要件を厳格に守り作成する必要があります。訂正方法についても同様です。(民法968条参照)

公証人が遺言者から内容を聞き取って、公証人が作成します。

<当事務所にご依頼の場合>
なぜ遺言を作るのか、どんな心配ごとがあるのか、誰に何を残したいのか、家族に残したい言葉… など、丁寧にご相談にのり、文案の提案、公証役場との事前打ち合わせもいたします。ご本人は、自分の思いを当事務所にお話頂くだけで結構です。

メリット
  • 費用がかからない
  • いつでも、思いついたとき、自分一人で作成可能
  • 遺言の内容や存在を秘密にできる
  • 原本は公証役場で保管。紛失の恐れがありません
  • 家庭裁判所による検認が不要
  • 法律的な不備が無い
デメリット
  • 紛失、偽造、改竄の恐れがある
  • 法律的不備があり、何を意味しているか分からない、財産の特定が不明確などの場合、死後に遺言内容を実現できない恐れがある
  • 家庭裁判所による検認が必要
  • 費用がかかる
  • 2名以上の証人の立ち会いが必要 ※適当な人がいなければ当事務所が手配します

公正証書遺言のススメ

 費用がかからないならとりあえず自筆証書遺言を作っておく。このように考える方は多いです。しかし当事務所は公正証書遺言をお勧めします。

 そもそもなぜ遺言を作成しようと考えたのか、思い返してみてください。「ご自身の家族への思いを記すため」「残されたご家族がスムーズに遺産承継できるように」「遺産が原因で、大切な家族の関係にヒビが入るのを避けるため」、ではなかったでしょうか。

 そのためには、公正証書遺言が理想です。相続の依頼を受ける中で、「公正証書遺言にしておけば良かったのに」と思うことがよくあります。

自筆証書で困ったケース

 自筆証書であったため、当初の目的を満足できなかった実際のケースをいくつか紹介します。

  • 遺言の内容が不明確
     自宅を妻に残そうと自筆証書を書きました。死後、妻が登記手続きに着手。しかし「自宅」の特定があいまいでした。このため遺言書を使っての登記手続きが法務局では通りませんでした。結局、他の相続人にハンコ代を払い遺産分割協議書を作成し、自宅を妻名義にする登記手続きを完了しました。
     公正証書遺言なら、公証人という法律のプロと相続手続きに精通している当事務所が、遺言の内容を二重三重にチェックできます。
  • 検認手続きに一苦労
     自筆証書遺言の場合、死後に家庭裁判所による検認手続きが必要となります。これが結構面倒です。必要書類として、故人の出生から亡くなるまでの全戸籍、相続人全員の戸籍、住民票、検認手続きの申請書など、必要書類は多岐にわたります。これを集めるだけでも一苦労です。さらに、検認が行われると、裁判所から全相続人へ通知が行きます。この通知のため他の相続人との間で人間関係がギクシャクすることに。
     公正証書遺言ならこの検認が不要で、すぐに不動産の名義変更や預貯金の払い戻しが出来るのです。

 他にもご紹介したい事例は山ほどあります。大切なご家族をしっかりと守るためにも、あらゆる面でやさしさがある公正証書にしましょう。

公正証書にするまでの流れ

(1)当事務所で相談

 なぜ遺言を作るのか、ご自身の死後どんな心配ごとがあるのか、誰に何を残したいのか、家族に残したいメッセージ… などなど色々とお話してください。お話頂いたことをどのように遺言の文面に起こすのか、これは当事務所の仕事です。ご本人様は自分の思いをお話頂くだけで結構です。具体的には、以下のお話をお伺いします。

  • 対象財産の確認(何があるか)
  • 財産分配方法の検討(誰に何をどのくらい残す)
  • 遺言を作成する一番の目的(遺言を作成しようと思ったきっかけ)
  • 将来的な心配ごと、その対策の検討(相続人が揉めないように・・・)

(2)遺言書の文案の検討、付言事項の検討

 ご本人から様々なお話や遺言の目的、ご心配なさっていることをお話して頂き、一緒に遺言書の文案を検討します。財産面以外でも、家族に残しておきたいメッセージや家訓などございましたら、教えて下さい。付言事項という方法で公正証書遺言に載せることができます。例えば、「私は、○○に巡り会えたことが何よりの幸せでした。家族仲良くお互いを思いやって暮らしてくれたら、私にとってこれに勝る幸せはありません。」などなど、感謝の言葉を残すのもよし、伝えておきたい教訓、家訓などを残すのもよいでしょう。遺言にはこんな自由な側面もあるのです。

 他にも、例えば日常家族間だけで使っている呼び名でもって子供たちに向け「○○ちゃん、△くん、兄弟仲良くやりんさい。」など本人の口調(例えば方言など)そのままの語り掛けを読んだ相続人は、生前の母の姿を懐かしく思い出して、その遺言に従うなんてこともあるのではないでしょうか。

 故人の気持ちの入った言葉を読めば、多少分配内容に不満のある相続人がいたとしても丸く収まることでしょう。

(3)公証人との事前打ち合わせ

 当事務所が公証役場へ出向き、事前の打ち合わせをします。法律的な不備が無いか、内容が不明確でないか、将来の遺言執行に支障となりそうな部分はないか、様々な角度から司法書士と公証人で検討します。この場にご本人が出席しなくても大丈夫です。もちろん公証人との間で作成した文面はご本人にご覧頂き了解をもらいます。

(4)公正証書遺言の作成

 ご覧頂いた文面でOKであれば、公正証書の作成となります。この場面では、ご本人が公証役場へ出向く必要があります。もちろん当事務所も同行しますので、ご安心下さい。

 作成にあたり、証人2名の立ち会いが必要となります。証人には信頼できる友人などに依頼しても良いでしょう。(法律上証人にはなれない人もいますので、事前にご相談下さい。)もしいらっしゃらなければ、当事務所にて手配することも可能です。

 30分から1時間程度で終了します。完成した公正証書の原本は公証役場に保管され、ご本人には正本と謄本が渡されます。以後大事に保管してください。

 以上のように、公正証書にするまでには時間がかかります。あえてじっくりと時間をかけ、自身のこれまでの人生、これからの人生のこと、家族のこと、財産のこと… いろいろと考え、遺言を作ることも良いと思いませんか?

 もちろん、とにかくできるだけ早く作りたいというご要望があれば対応可能です。

遺言の費用

遺言費用モデルケース

  • 夫婦の間に子供はいない。
  • この場合、妻に加え夫の兄弟も法定相続人となりますが、遺言により遺産の全てを妻に残したい。
  • 遺産は自宅マンション(固定資産評価額2,000万円)と預貯金(口座1つ500万円)。
  • 遺言立会人2名のうち、1名を当事務所が手配。
(1)遺言作成サポート費用 80,000円
(2)相続財産特定の作業 10,000円
(3)公証人手数料 約40,000円
(4)その他 12,000円
合計

10〜11万円 (別途、実費4〜5万円)

遺言費用詳細

(1)遺言作成サポート費用
一般的なケース 80,000円
特殊なケース

120,000円〜

  • 以下のような場合です。
    • 前妻の子と後妻の子が共同相続人となるケース
    • 公益団体に自己の財産を残したいケース
    • 遺産を換価し、金銭で分配するケース(精算型遺贈)
(2)相続人調査や財産調査の手数料
※調査を必要とする場合に限り発生します
相続人特定の作業
  • 戸籍謄本等の収集
    • 10,000円/7通まで + 実費(300~750円/1通)
      ※以降1通ごとに1,500円/1通 + 実費
相続財産特定の作業
  • 不動産登記簿謄本
    • 1,000円/1通 + 実費(700~1,000円/1通)
  • 各種図面
    • 1,000円/1通 + 実費(500~1,000円/1通)
  • 評価証明書・名寄せ帳
    • 1,000円/1通 + 実費(300~400円/1通)
(3)公証人手数料

 公証人へ支払う実費です。以下は日本公証人連合会ホームページからの抜粋です。

目的財産の価額 手数料の額
100万円まで 5,000円
200万円まで 7,000円
500万円まで 11,000円
1,000万円まで 17,000円
3,000万円まで 23,000円
5,000万円まで 29,000円
1億円まで 43,000円
1億円を超え3億円まで 43,000円に5,000万円までごとに13,000円を加算
3億円を超え10億円まで 95,000円に5,000万円までごとに11,000円を加算
10億円を超える部分 249,000円に5,000万円までごとに8,000円を加算
  • 財産の相続又は遺贈を受ける人ごとにその財産の価額を算出し、これを上記基準表に当てはめて、その価額に対応する手数料額を求め、これらの手数料額を合算して、当該遺言書全体の手数料を算出します。
  • 遺言加算といって、全体の財産が1億円未満のときは、上記によって算出された手数料額に、11,000円が加算されます。
  • さらに、遺言書は、通常、原本、正本、謄本と3部作成し、原本を公証役場に残し、正本と謄本を遺言者にお渡ししますが、これら遺言書の作成に必要な用紙の枚数分(ただし,原本については4枚を超える分)について、1枚250円の割合の費用がかかります。
  • 遺言者が病気又は高齢等のために体力が弱り公証役場に赴くことができず、公証人が、病院、ご自宅、老人ホーム等に赴いて公正証書を作成する場合には、上記に50%加算されるほか、公証人の日当と、現地までの交通費がかかります。
(4)その他
当事務所が遺言執行者になる場合 応相談(最低300,000円)
当事務所が遺言作成の立会人
を手配する場合
1人につき12,000円
出張料

1時間あたり5,000円〜
※ご自宅へ出向く必要がある場合、頂戴することがあります。

アクセスマップ

  • 〒251-0052 神奈川県藤沢市藤沢973 相模プラザ第3ビル 2-B
  • 藤沢駅(JR、小田急、江ノ島電鉄)北口から徒歩5分

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